「うちの子、全然勉強のやる気がないんです……」
「志望校、先生に言われたところでいいやって投げやりで……」
受験シーズンが近づくと、多くの保護者様からこのようなお悩みを聞くことがあります。親としては、「少しでも良い高校に行ってほしい」「将来苦労してほしくない」と思うものですが、肝心のお子様自身に「やらされている感」があると、受験勉強はただの苦行になってしまいます。
私はかつて学習塾を経営し、多くの受験生と向き合ってきました。その経験から断言できることがあります。
高校受験は、単に「偏差値の高い学校に入るための試験」ではありません。
将来社会に出たときに必要となる「生き抜く力」を身につける、絶好のチャンスなのです。
今回は、受験勉強を通じてお子様に身につけてほしい「2つの重要なスキル」について、私の経験をもとにお話しします。
元塾経営者が受験生に勧める「2つのこと」
私が受験生、そしてその保護者様に常々お勧めしているのは、以下の2点です。
- 目標を自分で考えること
- 時間を逆算させて今するべきことや今後の計画を立てること
「え? 勉強法じゃないの?」と思われたかもしれません。
しかし、この2つこそが、成績を伸ばすための土台であり、さらには高校入学後、社会人になってからも通用する最強のスキルセットなのです。
1. 「目標を自分で考える」ことの重要性
高校受験において、志望校選びは非常に重要です。しかし、現状はどうでしょうか。
多くの場合、模擬試験の偏差値や内申点を見て、「自分の今の学力に合った学校(行ける学校)」を受験することが多いのが現実です。
もちろん、学力に見合った学校を選ぶことは大切です。しかし、それ以上に大切なのは「その学校に入って、何をしたいのか」を考える機会を持つことではないでしょうか。
「先生が決めたから」という理由の危うさ
「学校の先生に勧められたから」
「親に行けと言われたから」
「塾の先生がここなら受かると言ったから」
このような「他人任せの理由」だけで進学先を決めてしまうと、どうなると思いますか?
無事に合格できたとしても、入学後に「何のために頑張ればいいのか」を見失い、迷ってしまう子が少なくありません。また、勉強が難しくなったり、部活動で壁にぶつかったりしたときに、「自分で選んだわけじゃないし」と言い訳をしてしまい、踏ん張れないことがあります。
「入学後の姿」を具体的にイメージさせる
そういった入学後の「燃え尽き」や「壁」を作らないためにも、受験勉強を始める段階から、常に自分で目標や目的を考えさせる機会を作ることが非常に大切です。
目標は、立派なものでなくて構いません。具体的であればあるほど良いです。
目標の具体例
- 「○○高校に入学して、得意の英語で学年10位以内に入る!」
- 「○○部の強いあの高校に入って、県大会に出場する!」
- 「文化祭が楽しそうな○○高校で、実行委員をやる!」
- 「将来○○になりたいから、そのために必要な資格が取れるこの学校に行く!」
このように、「合格」をゴールにするのではなく、「合格した後の自分」をゴールに設定するのです。
「公言」することで周りもサポートできる
そして、自分で考えた目標を家族や先生に「公言」してもらいましょう。
口に出すことで、本人の中に責任感が生まれます。
また、周りの大人も「勉強しなさい!」という一方的な命令ではなく、「県大会に出るためには、この高校に行く必要があるよね。そのために今ここを頑張ろうか」と、本人の夢に寄り添ったアドバイスや見守りができるようになります。
この経験を通じて、「自分で目標を立てる」という習慣がついた子は、高校入学後も、大学選びや就職活動においても、自分の軸を持って進路を選べるようになります。
2. 時間を逆算させて「今やるべきこと」を決める
目標が決まったら、次に行うのが「計画」です。
ここでお勧めするのが、「ゴールから時間を逆算して計画を立てる」という手法です。
「じゃあ、どうする?」の問いかけが子供を育てる
例えば、「数学の点数をあと20点上げたい」という目標を子供が口にしたとします。
ここで親や先生がすぐに「じゃあこの問題集をやりなさい」と答えを与えてはいけません。
「じゃあ、そのためにどうする?」
と問いかけてみてください。この「問いかけ」こそが、次に何をするべきかを自分で考えさせるスイッチになります。
逆算思考のトレーニング(具体例)
もちろん、最初から一人で完璧な計画を立てられる子は稀です。
大人が間に入り、以下のように一緒に思考を整理してあげることが大切です。
【思考のステップ】
- 目標:数学を20点上げたい(受験当日までに)
- 課題:1年生の関数分野が苦手でいつも落としている
- 計画(3ヶ月前):1年生からの苦手分野の総復習を終わらせる必要がある
- 計画(4ヶ月前):復習すべき苦手箇所を見つけるために、総合問題を解く必要がある
- 手段:「苦手単元には時間をかけたいから、この時期は塾のコマ数を増やそう」または「YouTubeの解説動画でここを重点的に見よう」
このように、「受験当日」というゴールから、「3ヶ月前」「1ヶ月前」「今週」「今日」と時間をさかのぼっていくと、「今、何をやるべきか」が明確になります。
漠然と「勉強しなさい」と言われても動き出せない子でも、「来月の模試のために、今週はこの単元を終わらせる必要がある」と分かれば、自分からテキストを開くようになります。
自分でやるべきこと、塾や学校でやるべきことを切り分けて考える良い機会にもなります。
「言われたことしかできない大人」にしないために
私がなぜ、ここまで「自分で考えること」にこだわるのか。
それは、現代社会が抱えるある問題への危機感があるからです。
現在は、家庭でも学校でも、先回りして「○○しましょう」「次はこれですよ」とお膳立てしてしまう傾向があります。
その結果、「自分で考えることが苦手で、言われたことしかできない」まま社会に出てしまい、仕事で壁にぶつかったときに困ってしまう若者が増えているように感じます。
ビジネスの世界でも、活躍するのは「指示を待つ人」ではなく、「目的(ゴール)を理解し、そこから逆算して今やるべきタスクを自分で設計できる人」です。
受験は「思考の自立」のトレーニング
高校受験は、15歳の子供たちが初めて直面する、人生の大きな岐路の一つです。
この貴重な機会を、単なる「偏差値競争」で終わらせてしまうのはもったいないことです。
親御さんが手取り足取りレールを敷くのではなく、
「あなたはどうしたい?」
「そのためにどういう作戦を立てようか?」
と問いかけ、横で伴走してあげる。
そうすることで、お子様は受験というプロジェクトを通じて、「自分で人生をコントロールする力」を身につけていきます。
まとめ:今日から家庭でできること
最後に、今日からご家庭で意識できるポイントをまとめました。
- 志望校選びは「入学後の姿」まで想像させる
「合格」をゴールにせず、「何部に入りたい?」「どんな高校生活を送りたい?」とワクワクする未来を語らせてあげてください。 - 指示ではなく「問いかけ」をする
「勉強しなさい」ではなく、「目標点数にはあと何が必要かな?」「いつまでに終わらせる?」と質問し、本人に答えを出させてください。 - 計画作りをサポートする(代行しない)
カレンダーを見ながら、「ここまでにこれをやるなら、今週はこれくらいかな?」と一緒に逆算の思考を手伝ってあげてください。
高校受験は、お子様が大人への階段を登るための大切なステップです。
「自分で決めた目標」に向かって「自分で計画を立てて努力した」という経験は、合否の結果以上に、お子様の人生にとって大きな財産となるはずです。
ぜひ、お子様を信じて、考える機会をたくさん作ってあげてください。
